緑に黄色の差し色が入っているのが好き
今日は新しいアルバイト先の初出勤の日だった。
セブンイレブンのバイトだ。
バイト先に着くと、制服を渡され、着替えて、とベテランらしき40代くらいのおばさんのスタッフに言われ、制服を着た。
斜視で、手が大きくて、爪の形が綺麗な人だった。
着替え終わると、そのおばさんのスタッフに、帽子は取ろうか、と言われた。
僕は被ってきていた帽子を取るのを忘れていたのだ。
チャンピオンの帽子で、緑色で、つばの部分が黄色になっている帽子だ。
僕は、セブンイレブンの緑の制服とよく似合いますよね、と言った。
おばさんの店員さんは、つばが黄色なのがいいね、と言った。
僕は、つばが黄色なのがいいでしょ、と言った。
僕の唾は黄色ではない。
僕の帽子のつばは黄色だ。
僕の唾には毒素は含まれていない。
僕の唾を浴びせられても石化したりはしない、たぶん。
ダーブラ的な感じではない。
高校の時の野球部の顧問をしていた日本史の先生は、ダーブラに似ていて、生徒たちにダーブラと呼ばれていた。
女の先生だった。
1番前の席でダーブラの授業を受けたことがあり、唾が飛んできて、左手が石化したことがあった。
僕は右利きなのでセーフだと思った。
高校の時、僕に、緑に黄色の差し色が入っているのが好き、と言った女の子がいた。
僕が、彼女の持っていた、緑に黄色の差し色が入った手提げ鞄を指し、緑が好きなの?、と聞いたらそう答えたのだ。
高校生活で彼女と交わした会話はそれが唯一だった。
高校卒業後、僕が浪人生活を送っている時、予備校の近くにあるコンビニで、彼女がアルバイトをしているのを見た。
ローソンだった。
ファミリーマートでもセブンイレブンでも100円ローソンでもなく、ローソンで働いていた。
緑に黄色の差し色が入っているのが好きと言った女の子は、青に白の差し色が入っているローソンで働いていた。
彼女の高校の時の立ち位置をコンビニで例えるなら、ポプラだった。
緑に黄色の差し色が入っているのが好きと言ったが、青に白の差し色が入っているローソンで働いていた女の子は、赤に緑の差し色が入っているポプラ的な立ち位置だった。
僕が何を言いたいかというと、人間は矛盾を孕んだ生き物だってこと。