そのミサンガ、ジッパーみたい

僕は昔、世界一周の客船に乗ったことがあった。

 

3ヶ月ほどの航海だった。

 

若者が200人ほど乗っていた。

 

船内企画というものがあり、さまざまな企画が日々行われた。

 

その企画の一つで、ミサンガ作りというものがあった。

 

その企画に参加し、ある1人の女の子と出会った。

 

目が離れ、魚のような顔をしていて、肩幅の狭い女の子だった。

 

彼女は、自分は泳げないからプールには入らないと言っていた。

 

彼女には鱗もヒレもなかった。

 

 

船が揺れれば心も揺れる。

 

僕は彼女に恋をした。

 

一緒にミサンガを作るうち、彼女に惹かれていった。

 

ミサンガを作っている彼女は、ミサンガになりたい僕に言った。

 

ミサンガに何をお願いするん?

 

僕は、なんでミサンガにお願いするの、流れ星でもないのに、と言った。

 

彼女は、ミサンガって切れたら願いが叶うらしいで、と言った。

 

僕は、なら、世界中の水が全部練乳になるようにお願いする、と言った。

 

彼女は、そのミサンガが切れたら、地球はミルキーになるね、と言った。

 

ミルキーよりも甘い時間が2人の間に流れた。

 

ミルキーは溶けるのも速い。

 

ある男が僕らのいるところにやってきた。

 

そして、僕のミサンガを見て、そのミサンガ、ジッパーみたい、と言った。

 

彼女は笑った。

 

僕は恥ずかしくなった。

 

僕は、ジッパーみたいなのはお前の顔面なんだよ、とその男に言った。

 

その男は、お前はジッパーじゃなくて頭パッパラパーだけどな、と僕に言った。

 

僕は、お前はラッパーか、と言った。

 

その男と僕は仲良くなった。

 

ラッパーにとって口喧嘩は愛の文通のようなものである。

 

もうあの頃には戻れない。

 

もうあの騒がしい夜には戻れない。

 

僕らは確かに、笑い合い、泣いた。

 

そして、僕は待っている。

 

君からの手紙を。

 

気にしてないよの一言を。

 

忘れたあの歌の続きを。

 

andymoriもたまたま僕と同じことを言っていた。

 

Sunrise &Sunsetは僕の1番好きだった曲だ。